ビブリオフィリアの愉快な冒険

私とこの本との物語、本の感想、etc.

「ね」 猫を棄てる

 

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猫を棄てる  村上春樹著 文芸春秋社

何とか、事実を切り取って書こうとする、村上さんの姿勢に、
共感しました。
色々な思いもあるだろうに、

それを、選んで選んで、十分であろうとしている感じ。

過剰でなく、必要なだけ。


それは、いつもの村上さんの文章を書く姿勢なのかもしれないけれど、
今回のこの本は、極めて事実に沿った事象を書き留めておこうという、

そういう感じがしました。


なかなか、できる事ではないと思います。
親について、しかも、亡くなった親について書くのは、
どうしても、激しい感情が入ってしまい、むづかしい事と思います。


受け継いでいく思いというのも、
やはり、重い。


でも、書き終えた村上さんには、何か、区切りがついたのではないでしょうか。

そうだと良いなと思います。


先祖、血の連なり、生まれては死んでいく我々の営み。


猫を棄てに行く、村上さんは、
なんだか、物事が起きてしまって、感情が追い付いていけない・・・そんな風に見えました。
けっこう、私もそのタイプで、人からは落ち着いて見られるのですが、
単に感情が追い付いていってないだけで。

遅れて、何やかや考えるのですが、
それで、何という結論を出せたという事もあまりなく、
私の場合は、ただただ、遅れているだけ。


まあ、それで、この年まで何とか来ましたし、
これからも、こんな感じなんでしょうが、
私の母のように、こう来たら、すぐにこう返すって条件反射のように、
出来る人は凄いなぁって思ってしまいます。


親と一緒に猫を棄てに行ってしまう、村上少年を、
私は、酷いとは思わないです。


そういえば、猫を棄てる話って、何か、読んだような・・・と
思いましたが、棄てるのではなく、昔の妻にあげる話でした。
「猫と庄造と二人のをんな」谷崎潤一郎
これは、猫に未練たっぷりの人間模様でした。


閑話休題
木に登って行って、消えてしまう子猫は、
この出来事がそのまま、村上さんの小説のような。
そんな味がします。
何がと言われても、言語化出来ないのですが。
ああ、やはり、文章は難しい。